珈琲西武のプリン・ア・ラ・モード
プリン・ア・ラ・モードと聞いてあなたは何を思い浮かべるだろう?
そう、もちろんプリンだ。
だがこいつは違う。まずプリンが見えない。 それはホイップクリームの海の底。 たどり着くにはそれなりの気力、というより諦念を必要とする。それともある種の悟りだろうか。
しかしあなたは、そんな馬鹿な、と疑問を呈するかもしれない。プリン・ア・ラ・モードど言っておいて中心にプリンが据わっていないはずがないじゃないか、ホイップクリームなんてどうせ添え物だろう、と。
確かに常識から考えればその意見は正しい。しかし、ここ珈琲西武は私たちが誇る天然喫茶であるということを忘れてはいないだろうか。
とりあえず黙ってこの写真をご覧頂きたい。

お分かりだろうか。プリンが本当に見えないということを。
しかし公平を期すべくここで申し添えておくと、このプリン・ア・ラ・モードのプリンは社会通念上のプリン・ア・ラ・モードのプリンと同等かそれ以上の体積を誇る堂々たるカスタード・プリンなのである。カスタード・プリンのはずなのである。
ではなぜプリンが見えないのか。
答えは明々白々であるが、あえて言語化を試みてみよう。プリン以外のものが万事ふんだんに盛り込まれているからである。果物類に目がない諸氏は豊潤という言葉を想起するかもしれないし、あるいはアイスクリームに目のない諸氏は思わず吐息を漏らしてしまうかもしれない。こうしたデザート類でホイップクリームの少なさを普段お嘆きの方もこれなら心ゆくまで楽しめるだろう。
なお、被写体のmhatta氏の恰幅の良さのために、器がとてもちいさく見えているおそれがあるので指摘しておくと、奥に写っているコーヒーカップと比しても分かる通り、結構な大きさなのでである。その内のみならず外まで広がり続けるように様々なものがみっしりと盛りつけられている。
例えばアイスクリームはコーンつきのものが2つだ。まるで我々を挑発し誘い出そうとしているかのようにとがった2つのコーンと、その下で、ホイップクリームやフルーツの合間から震えるように白い顔を覗かせるバニラアイス。コーンを手に取ることでアイスクリームを他に先んじて食べることも出来る。
そして最後、ついに顔を表わすプリンの横顔はどこか涼しげで「やっとここまで着いたのね」と言わんばかりの余裕たっぷりの表情であなたを出迎えてくれるだろう。
なお、最近珈琲西武のサイトにこのような画像が掲載されていた。(天然喫茶愛好家の間で)大人気のプリン・アラモードは、諸物価高騰の折1000円である。